出版までの経緯


■ハッカーの教科書【完全版】 編集後(悔)記

 以下、WB17の第19章から抜粋しました。

 

●0x01.) はじめに

 2001年11月30日に発売された「ハッカーの教科書(IPUSIRON著)」は、第8刷りまで増刷を重ねたベストセラーとなりましたが、いくつかの情報が古くなったと感じたことと、著者と編集の意向として、ハッキングの基本となるアプローチを網羅した「真の意味でのハッキングの教科書」を作りたいという理想を追った結果、全688ページにもおよぶ、データハウス始まって以来の大作となりました。

 データハウスでは、一冊の単行本を作る場合、基本的に224ページが基準となります。これを基準として単純に考えたならば、3倍を越えるページ数となりました。

 しかし、上がってきた原稿を見て、書いた著者も編集も大慌て。前回のような組みで入稿すると約1000ページ、単行本でいえば4冊分の情報量と膨れ上がっていました。結果として、予想を越えまくる情報量となったため、文字の大きさを少し下げ、行間も少し縮め、ブロック単位での改ページもおこなわずギシギシに詰め込んでも3冊分のページ数に収めるのが限界で、実質的には単行本4冊分の情報量となっています。もちろん、上がってきた原稿を、ただ単純に右から左に流すといった入稿でもなく、前作同様に、つまらないネタは削除という方針で削りに削った結果としての情報量ということです。

 

 今回はこの「ハッカーの教科書 完全版」の発売を記念して、著者と編集の修羅場を振り返りながら、発注から編集、入稿作業、そして、出版までの全行程をレポートしたいと思います。

 

●0x02.) 序章

まど「もしもし、ハカーの教科書を改定するんだけど、今回はUNYUN以来のハードカバーになるってことで、よかったね。あと、前回、掲載できなかった情報や新ネタを加えて、もう少し分厚くして濃い内容の完全版にしようと思っているから3月末までに全部の原稿を頼むね」

いぷ「はい、わかりました。ケンジ氏もいるので面白い内容になると思います」

 

 ――3月・原稿送信。

 

まど「原稿の進行はどう?」

いぷ「少し膨らみました。先に完成分をメールで送ります。残りは、あと少しなので後で送ります」

 

 ――3月・原稿受信。

 

まど「けっこう増えたね。厚くなるけど、まぁ、いいか。レイアウトを詰めればお得感もでるしで……」

いぷ「はい。でも、残りもけっこうありますよ。完成したら送りますけど……」

まど「わかった。社長には、少し値段を上げるという方向で話をしておく。こっちは入稿始めておくんで、残りを頑張って仕上げてね」

いぷ「はい。でわ」

 

●0x03.) 事件発生

 

 ――メール受信・最終原稿到着。

 

まど「……あのぉ。文字数が全部で514,811文字あるけど、なんかの間違い?」

いぷ「……はぁ。そうなりますか? けっこう増えましたね」

まど「そうなるとかではなくて、単純に流すと単行本5冊は作れる量だよ」

いぷ「……はぁ。それで全部です」

まど「いや、だーかーらー! どうすんのさ! これ入れたら、凄いことになるわけよ! 算数できる? たし算からちゃんと教えたろか?」

いぷ「……はぁ。数学的には単行本5冊の量となりますね」

まど「だーかーらー! どこをどうすりゃいいのさ!ヽ(`Д´)ノ」

いぷ「……はぁ。でも、削るところはありませんよ(微笑)」

まど「おのれはアフォか!! ヴォケか!!!(マジギレ+ブチギレ×オオアバレ)」

いぷ「じゃぁ、東京に行って、ぼくも手伝いますよ」

まど「あたりまえやろが! 社長にどない報告するねん! 知らんぞ。漏れは1冊分の原稿でも文字見ると吐き気がして、目まいがクラクラする人間や!それが5冊分やど! 殺す気かい!」

いぷ「……はぁ。だーかーら! そっちで考えながら進めましょう。まどさんの部屋にゴキブリいなくなったっていうのは本当ですよね(汗)」

まど「いない。バルサン焚いたし」

いぷ「でわ」

 

●0x04.) 修羅場の悪寒

 

 ――3月末・いぷろん上京。

 

まど「さぁ、どうすんねん? どうやって文字を減らすわけ?」

いぷ「そのままでいいですよ。前・後巻の2冊にするとかどうですかね?」

まど「君の脳には、引き算ちゅう概念がないのか?(´・ω・`)」

社長「とにかく減らすという方向で進めてみよう」

いぷ「はぁ。わかりました」

 

 ――4月初旬・入稿完了前。

 

社長「どうしてもページが減らないというなら、そのまま出すというのはどうだろう? まぁ、500ページあたりで収まるならそれでいいよ」

まど「……マジですか? 癖になりますよ。算数できないし、体重も重いしで、 このまま放置すると腐りますよ」

社長「原稿の内容的には、どんなもんなの?」

まど「ハッキングで基本となる手法を網羅しています。これまで、ありそうでなかった大作となりますね。ハードカバーに堪えうる内容です」

社長「書き口や文体などは、どんなもんなの?」

まど「真面目な書き口で、ですます調ですね。これも適しています。相変わらず『厳密には』『次に示します』『列挙します』とかウダウダと金魚のうんこみたいな能書きがダラダラありますけど問題なしです。ぼくなら、その部分を真っ先に破って捨てるか、マジックで真っ黒に塗りますけど」

社長「よし、化粧箱に入れよう! 本体も銀インクを使って豪華にしよう!」

まど「なるほど、権威を示すタイプの路線ですね! いいかもしれない!」

いぷ「はぁ。わかりました」

まど「わからいましたじゃねーだろ! あるがとうございますだ!」

いぷ「はぁ。ありがとうございます」

 

●0x05.) 地獄への旅立ち

 

 ――4月初旬・入稿完了。

 

 今回の詐欺事件、その経緯を簡単にまとめると、このような動機から、その犯行がおこなわれたわけです。

 しかし、捜査を進めるにつれ、その犯行は、卑劣極まりないものとなっていることが判明していきました。

 

 ――デザイナー、焦る。

 

業者「入稿の件なんだけど、どう詰めても600ページは軽く越えるよ」

まど「うーん、そこをどうにか!」

業者「無理。絶対無理!」

まど「わかりました。では、600ページを目指して、余分と思える部分を削除し入稿しますので、それで進めてください」

 

 ――まどさん、余分なところを削除。

 ――いぷろん、行間を詰める。

 

 ――4月中旬・ゲラ上がる。

 

業者「ようやく600ページは越えたけど、どうにかなったよヽ(;´Д`)ノ」

まど「ありがとうございます!」

業者「これが初稿ゲラね」

いぷ「あれ? まどさん、どこか原稿を削除してませんか?」

まど「うっせーな! 糞なところはデリデリ。どうでもいいとこだしね」

いぷ「それはマズイ。抜けると整合性がとれなくなります!(`Д´)」

まど「おいおい! マジかよぉ〜ヽ(;´Д`)ノ」

いぷ「とにかく入れなければ!」

 

 ――編集部に冷たい空気が歩く。

 

まど「……まぁ、大先生がそうおっしゃってますので、仕方ないかと」

業者「……まぁ、こっちは指示通りにやるしかないからやるけどね」

社長「……仕方ないな。少し手間はかかるが、そうしよう」

まど「本当にすんませんです(´Д`)」

 

●0x06.) 地獄のずんどこだんす

 

 ――再び、作業に入る。

 

まど「……ったくよぉ! それなら原稿取らなければよかったじゃんかよぉ!」

いぷ「勝手に原稿を削除したのは、まどさんですから」

まど「ばーか(`Д´)ばーか(`Д´)ばーか(`Д´)」

いぷ「とにかく赤字を入れます」

 

 ――いぷろん、ゲラを相手に黙々と作業に入る。

 ――まどさんはサイケをバックに踊り狂う。半拍遅れのタイミングが難しい。

 

 ――4月下旬・最終ゲラ上がる。

 

 ――いぷろん、ゲラを相手に黙々と作業に入る。

 ――まどさんはサイケをバックに踊り狂う。半拍遅れをマスターしてきた。

 

いぷ「なんとか終わりました」

まど「おし! 苦しゅうない!」

いぷ「ところで、まどさんは全然仕事してないように思えますが……」

まど「おのれはアフォか! 漏れの仕事はサイケを踊って勢いをつけるところから始めるわけよ。編集はぐる〜ぶが大事なんや。その勢いを、そのまま仕事に反映させるのが、プロの編集者いうことや。覚えとけよ」

いぷ「はぁ。でも、一日中、ずっと踊っているじゃないですか?」

まど「だからぁ! 踊っていると時間が過ぎるやろ? ほんでタイムカード打って家に帰って、ミックスするんや。それが編集いうもんや。それが都会で生きるということや。まぁ、とにかく、なんでも勉強いうことや」

いぷ「はぁ。。。」

 

●0x07.) 最終章

 

 ――まどさん、最終ゲラをチェックする。

 

まど「な、な、なんじゃ、こりゃぁ! 『ブルートフォースタック』てなによ?新しいテクニックか? ブルートにフォーでスタックでもするいうことかいや〜〜〜〜〜〜〜!」

いぷ「あぁ、アタックの『ア』が抜けていますね(´・ω・`)」

まど「……てことはなにかい? そういう部分は直ってないということ?」

いぷ「厳密にいうと、そうなりますね」

 

 ――まどさんプルプル! でも、踊る。

 

まど「明日、最後の戻しよ。688ページ全部を見ないといけないわけ?」

いぷ「そうなりますね」

まど「おのれは目の悪い身体障害者になにをさせる気じゃ! 688ページの赤やど! 明日までやど! できるかいや! 大体や、なんで、こんなキチガイみたいに一杯書かなあかんねや! このキチガイ! 変態!」

いぷ「いや、あらゆる可能性があるからです。数学的にいうならば……」

まど「やかましわ! わしが書いたらハッキングなんて数行で終わるぞ」

 

   (1)バイダに潜り込む

   (2)パスを貰う

   (3)会社バックレで場末のネカフェに行く

   (4)データベースをアウトプット

   (5)謎

 

まど「わぁったか! 漏れのようなプロにいわせると、そんなもんや」

いぷ「はぁ。早く直さないと間に合いませんよ」

まど「うん。じゃ、まずはサイケで踊って勢いつけるか!」

いぷ「……(´・ω・`)」

 

 ――ドッシカッシ〜ウニュウニュドッシカッシ〜グニャグニャ〜♪

 (……永遠にループ)

 

●0x08.) まとめ

 

 ――そんなわけで、688ページを一日で処理したのは初めての経験で、最後の日はフラフラになりながら徹夜の赤字入れとなりましたが、なんとか完成しました。

 

 最近は、コンピュータ・アンダーグラウンドという世界も崩壊してしまい、とくにハッキングというコミュニティは、「セキュアだ! インシデント!」だのと、ごたくを並べて白い方向に進み、弱体化している中、本書は一本筋の通った自信を持てるドス黒い大作となりました。

 そして、今回は、kenji aiko氏も参加ということで、完全匿名を追及したドス黒いオリジナルメールクライアントや、スパムメール専用クライント、そして、隠しディレクトリやファイルを探知する専用ソフトなども用意しています。

 IPUSIRON氏が理想とするツール群を網羅したCD-ROM(一部ツールはネットよりダウンロード)も付属しています。

 さらに、今回は、データハウス初の“化粧箱入り”の“ハードカバー”です。

 その分、価格もお高くなりますが、著者の理想を徹底的に追及したため、入門者はもちろん、セキュリティ関連からサーバー管理者にいたるまで幅広く対応する、壮大なスケールの一冊となっています。

 


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